このページは2004/3/9更新
04/03/07創設
従前より私共が損得を検証する場合の計算法として「返済能力を加味した計算法」の重要性を提唱しているところではありますが、あるサイトで複数ローンの繰上返済で、いかにも−最適化?−が存在するかの様な記述を発見いたしました。内容的には前編の繰り上げ返済の最適化?の矛盾と全く同様の事象ですが、ユーザーにとって示唆に富む重要な事項を含みますので充分留意して、よくよく理解した上で対処下さい。今回のサイトは専門資格もあり人気もありそうなので掲載されている限り出典であるリンク先は明確にしておきたいと存じます。
−内容要約−
借入総額4,000万円で、下記の2つのローンがあります。
ローン1 | ローン2 | |
借入金 | 2,500万円 | 1,500万円 |
返済期間 | 30年間 | 30年間 |
金利(当初10年間) | 2.6% | 3.5% |
金利(10年目以降) | 4.0% | 4.0% |
返済開始3年経過後に400万円の繰上げ返済(期間短縮型)
次の2つのパターンで検討
パターン1:ローン2にのみ全額の400万円繰上返済
→原則通り、金利の高いローンだけを優先的に返済
パターン2:ローン1に150万円、ローン2に250万円を分散して繰上返済
軽減される利息の総額
パターン1→ 約 510万円
パターン2→ 約 592万円
原則どおり、金利の高いローンだけを優先的に返済したパターン1よりも、パターン2の方が利息の軽減効果が大きくなりました。ちょっと意外な結果だとお感じになられたかと思います。
これは、基礎編でも触れましたが、(注)返済開始後早い段階で繰上げ返済することによる利息の軽減効果の大きさと、前述の「借入額の多いローン」の繰上げ返済の効果によるものです。
私共の詳細な論理展開は省略します。
論点は前編と全く同一で、結論も全く同一です。
元利均等返済シミュレーションで導き出した結果のみを一覧しますと、 (端数処理設定=黄・緑・赤)
単位:円 | 繰上無し | パターン1 | パターン2 | 修正パターン1 返済能力加味 |
修正パターン2 返済能力加味 |
(参考) ローン1へ全額 返済能力加味 |
当初からの 総返済額合計 |
65.733.971 | 60.519.732 | 59.751.643 | 59.330.199 | 59.548.665 | 59.914,214 |
利息総額 | 25,733,971 | 20,519.732 | 19,751,643 | 19,330,199 | 19,548,665 | 19,914,214 |
繰上無しより 利息減比較 |
0 | 5.214.239 | 5.982.328 | 6.403.772 | 6.185.306 | 5.819.757 |
パターン2より 利息減比較 |
-5.982.328 | -768.089 | 0 | 421.444 | 202.978 | 162.571 |
最終年月 上:ローン1 下:ローン2 |
30年 30年 |
30年 19年10ヶ月 |
27年5ヶ月 23年2ヶ月 |
25年7ヶ月 19年10ヶ月 |
25年9ヶ月 23年2ヶ月 |
23年7ヶ月 25年10ヶ月 |
約 510万円≒5.214.239 及び 約 592万円≒5.982.328 で同等と見なして話を進めます。
パターン1では、ローン2は19年10ヶ月目(月回238)で終了しますが、その後の返済額が一切考慮されていない様子。
すなわち、ローン2で支払っていた月々75,302円を、ローン1へ反映させずに月々121,826円の従前の額のまま処理している。
19年11ヶ月目以降楽になる返済法 と 23年3ヶ月目以降楽になる返済法 を同列で評価しては適正な判断は下せません。
別の言い方をすればパターン1では19年11ヶ月目以降毎月75,302円貯金でき、パターン2では23年3ヶ月目以降からです。
私共提唱の返済能力を加味した計算法による「19年11ヶ月目以降、合計した月々197,128円の返済扱」で、とすれば
パターン2よりさらに利息総額で42万円程度も減少(「軽減される利息の総額」としては増加)される計算となる。
−−−実は比較計算としての公平性を期すると421,444円と202.978円の差218,466円となる−−−
パターン1・2での取り扱いは計算上公平ではなく、「判断根拠解説として誤っている」とあえて指摘致します。
一般の方のみならず当該著者も意外に感じているのは当たり前で、計算方法が公平でなく適切でないからです。
出来れば、前編繰り上げ返済の最適化?の矛盾でも、今一度ご確認下さい
本当にこの辺りの理解は私共も良く陥る認識違いの内でも大変重要な事項の1つなのです。
繰上返済に於いて、期間短縮型と返済額が減少する期間同一型でも同様で、勘違いされている方も多くおられます。
「返済額が減少するということは手元にその分の金額が残るのだ」という視点からも十分に理解を進めて下さい。
計算方法として、算定内の金利の伴う金額 と 算定外の手元に残る金額 との扱いを正しい認識の元で行わないと、
今回の例のように、「金利の低い方への優先返済も・・」などと全くとんでもない方向へと導くことになりかねません。
改めて注意を喚起したいと存じます。
誤りや皆様のさらなる反論がございましたらご指摘下さい。
返済能力を加味した計算法 による計算参考例 400万円の繰上予算で 50万円単位で 繰上額を変化させたものが 右表です。 記憶1-はローン1 記憶6-はローン2 「月分繰」欄は繰上返済額 「月回36」欄は支払利息総額 「最終」は処理後の最終月回 |
![]() |
↑上表をそのままグラフにした図↓。 繰上返済が無い場合が一番左端
↑上図では左から2番目以降が分かりづらいので1番目を省略した図↓
結局余り議論の余地はありませんね。やはり金利の高い方からの優先返済でよいのです。
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平成16年3月7日新設以来通算